サイトハウンドをふかぼり

書評, 犬猫

犬界の走り屋さんたち

サイトハウンドをふかぼり

縁あって個人的にウィペットを飼っているので
サイトハウンドに対しての思い入れは他の人より多い。

細いですねー!足が速そうですねー!どこの国の犬ですか?
マイナー犬種ながらいろんな質問を受けます。

今回はそんな犬界の走り屋、サイトハウンドをふかぼりします!

JKCグループ

10G:視覚ハウンドと呼ばれるグループの犬たちになります。
特徴として、その名の通り、目で獲物を追う犬たちですね。

どうしても犬というと嗅覚、鼻で獲物を追跡するイメージですが
このグループの犬たちは違います。

また、このサイトハウンドの一部は飼育犬の中で
最も古い犬種としても知られています。

サルーキ

CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=565064

いきなり本命登場。
飼育犬中で、最も古い犬種と言われているのがこのサルーキ。
その起源は(やはり)メソポタミア文明のテペ・ガウラ遺跡。
久々にグーグルマップ更新しました。場所探しも一苦労です。

その彫刻がこちら

まさにサルーキですね!

まとめ

またこのタイミングでまとめを持ってくる

DNAの解析の結果、
最も古い犬種の一つがサルーキであるという研究結果が一部で出ています。
サイエンス誌 2004年5月21日号
犬の起源について考える の記事でも書きました。
メソポタミア、中東あたりが犬の起源であるという説も多い。

しかし。

サルーキとオオカミ

CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=565064
うーん?

見た目だけが全てではないというのもよくわかる。
しかし。。。あまりにも容姿が違いすぎやしないだろうか。。

これが柴犬とか、ハスキーと言われるならまだしも。

垂れ耳で優雅なサルーキと
野性味あふれるオオカミはあまりにもかけ離れている。

一方、柴(日本)やハスキー(シベリア)では
犬の起源とされる東アジア、メソポタミアあたりとも
距離がありすぎる。
これらの犬種は既に犬、家畜として確立した上でその後に
広がっていったと考える方が自然だ。

何が言いたいかというと、
やはり、
オオカミからイヌは作られないのではないか
というところに尽きる。
共通の祖先を持つとか、同じ染色体の数で子を残せるなど、
「遺伝的に近い」のは事実ですが、やはり、イヌはイヌ。
オオカミをいくら手馴付けてもイヌに変化はしない。

サルーキが最古のイヌ
オオカミから派生したわけじゃない

この両者を結びつけるのが、


この本だ。

地殻変動からの気候変化に適応

地殻変動が起こり、地面が高台と低地に分断される。
一方は熱帯雨林が残り、一方は雨量が少ない
サバンナが広がることになった。

この気候変動が生き物の道を二つに分けたに違いない。

森に残ったのは、チンパンジーとオオカミ。

彼らは鬱蒼と茂るジャングルに適応した能力を身につけていった。
樹上で暮らすチンパンジー、森の中で生きるオオカミ。

一方、雨が少ないサバンナに残されたのが
我々人類の祖先と、イヌの祖先だったのではないか。

ヒトとイヌの出会いはこう考える方が、
自然じゃないだろうか。いろいろと合点がいく。
本当に、心から、本の続編を期待している。
(ムツさん絶対お願いしますよ!)

 

サイトハウンドの始まり。

高い木や草が少ないサバンナでは、
嗅覚よりも遠くを見渡せる「目」が重宝された。
ヒトは視界を得るため二足で立つようになり、
イヌも、目で敵や獲物を発見するに長けた種類が生き残った。
つまり、視覚(サイト)ハウンドだ。

記録ではサルーキはガゼルを追ったとされる。
障害物の多いタフなジャングルの中を走る
オオカミタイプではなく、
見通しの良い平坦なサバンナ、
競技場のような場所でいかに早く走るか。

ヒトと最初に出会ったのはオオカミの子ではなく
サイトハウンドだったに違いない。

世界のサイトハウンド

アフガンハウンド


アフガニスタンと聞くと戦争のイメージしかないのがとても残念。
こんな素晴らしいイヌが生まれた国なんだと思うと見直したい。
もちろん、サルーキが起源となった犬種。

猟犬で活躍する一方で、羊を守る仕事もこなしていたようです。
万能犬としていろんな使われ方をしたのかもしれません。
こういう犬種は概して頭が良くて、気むずかしく、
コントロールが大変で飼いづらい上級者向けの犬になる。

ボルゾイ

かっこよ!めちゃくちゃかっこよ!
ロシアの至宝ともいうべき犬種でしょう。

世界にはしばしば、ウルフハウンドと呼ばれる
オオカミ狩り用の犬が存在する。その中の一つ。
前にオオカミから守る犬は紹介しましたが、
こっちは積極的に「狩る」方ですから全然違います。

そもそも群れで生きるオオカミを本当に狩れたのか
どうやって狩ってたのか、また気になるところです。
絶滅に追いやるほどにまで狩るってすごいですよね。。。

実際に会って見てもオオカミを狩れる要素はほぼ見えませんけど。

 

スルーギ


サルーキのスムースタイプと言ってもいい犬種。
紀元前2、3千年前から存在したという。
アフリカと聞くと遠いなーと感じてしまうが
地図を見ればスペインなど目と鼻の先だ。

このスルーギをエジプト方面から連れてきたのはベルベル人。
ここから北に行けば
スパニッシュグレーハウンドだし、
南に向かえばアザワクだ。

詳細な生い立ちはわかってないとされていますが
ベルベル人がエジプト方面から連れてきたことは明白。
(イスラム教と犬との関係性もふかぼりしていきたい!)

これまで散々イヌの歴史を追ってきていれば
もう、わかっていると思いますが、

イヌが勝手にほいほいあちこちに
広がっていくことはありえません。

どっかの誰か、民族が移動すると同時に、
連れて行っています。
これ、さらっと書いてますけど、
本当に本当にすごいことで、
オオカミやネコなど他の動物だと
勝手に広がっていって、在来種を脅かし、
生態系を乱すことになるのです。

犬では生態系破壊、野生への進出、
帰還が起こらない、というのがポイント。

アザワク

ABIS – ABIS expedition photo, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=4731667による

マリ共和国原産のサイトハウンドで起源は不明。
でもその姿から(スムースタイプ)
モロッコのスルーギから派生して来たのではないか
というのは容易に想像がつく。

イタリアングレーハウンド


古代ローマから存在すると言われ、イタグレの相性で人気の小型犬種。
今でもそうですが、小ぶりで扱いやすく、他の人気犬種に比べて
お手入れが圧倒的に少ないところが人気だったのかもしれませんね。

グレイハウンド


ここでいうグレイハウンドは「イングリッシュグレイハウンド」のこと。
エジプトの壁画に出てくるチズムから派生してできたと言われている。

チズム

アヌビス(番外編)

Jeff Dahl – 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=3257647による
エジプトで犬と言ったら、やっぱりアヌビス(神)じゃないの?と思いました。
ただジャッカルの可能性もあるらしい。なるほど。耳の大きさからすると
確かにジャッカルっぽく見えなくもない。

Jon Bodsworth – http://www.egyptarchive.co.uk/html/cairo_museum_50.html, Copyrighted free use, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=3803712による
セグロジャカル

ここまできてふと思ったのは
ファラオハウンドとかイビサンハウンドは?サイトハウンドじゃないの?
と思って分類を調べてみると、5G:原始的な犬・スピッツに分類されていました。
おいおいじゃあサルーキもそこじゃないのかよ!というツッコミ。

書評, 犬猫

Posted by kyotako

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