犬の起源について考える。

犬猫

世界で最も身近で、最も謎の多い生き物

まだまだわかっていなことの方が多い

人間に最も身近な動物といえば、犬か猫でしょう。
猫の方は意外とシンプルで、約13万1千年前に中東にいた
リビアヤマネコを家畜化したもの、という説でまとまっています。
(わずか2行!!)

一方、犬はどうか。

歴史的にはジャッカル説、コヨーテ説もありましたが、
オオカミが共通祖先であるというところで
最近になってようやくまとまりつつあります。

専門家ではないので詳細はわからないけれども、
これだけ技術が進んでDNA鑑定なんかも進み、ミトコンドリアDNAまで
調べてもまだ決定的なところが判明していないのは不思議です。
一番身近なのに、一番よくわってない、というだけでもミステリアスです。

オオカミと犬のハイブリッド、ウルフドッグも存在するので
それくらい、近い存在だから「線引き」が難しいのかもしれません。

先日イベントでお会いしたウルフドッグ、ブーリ。会った時は鳥肌が立った。

「どこからが犬でどこまでがオオカミか」は人によって違うのでしょう。
ある人は頭蓋骨の大きさ、ある人はその性格や行動、ある人は特定の遺伝子
それぞれ「犬」と「オオカミ」を定義する基準が違うんですね。
犬はオオカミの亜種だという説もあり、そうなると、
一体自分は何を探していたのかすらわからなくなってしまう。。

ここで問題を整理しましょう。ここで議論になっていることは
実は複数の問題が合わさっています。ネコの場合と比べてみましょう。

  • イエネコがリビアヤマネコから分化したのは約13万1千年前中東
  • イエネコが人類と出会ったのは約9500年前キプロス島(最古の飼育例)
  • ヒトがイエネコを家畜として固定化したのは紀元前3000年頃のエジプト

若干ニュアンスは乱れるものの、猫の場合はイエネコという種類が出来上がってから
人類と出会い、それから家畜化という流れになっています。

  • オオカミからイヌが生物学上、分化したタイミング
  • ヒトとイヌが出会ったタイミング
  • ヒトがイヌを家畜化したタイミング

一方、犬の場合は、イヌという生きものが誕生してから出会うのではなく、
オオカミを家畜化したのがイヌの始まり、
と3つのことがほぼ同時に起きていることですね。
これだけ見ても、イヌという生きものがネコと比べても
また一歩違う動物であるということがわかります。

イヌの誕生=人がオオカミを家畜化したことに成功
という図式ですね。だからややこしい、とも言えます。



人類の歴史も認識が変遷している!

これを言うと世代がバレるかもしれませんが、
私が社会の時間に学んだ時は(ン十年前の記憶)
アウストラロピテクス⇨原人⇨ネアンデルタール人⇨現生人類
と進化してきた。と習ったはずですが、
今はそれぞれ異なる種として、ある時は同じ時代に共存し、
ある時はハイブリッドとして交雑し、他の人類は徐々に淘汰され、
今に至る、という風に変わってきています。

アラスカンマラミュート

ヒトとイヌはいつ、どこで、出会ったのか

時系列

ヒトにとって最高で最大、最長の友であるイヌが、いつ出会ったのかは
犬好き、イヌマニアにとっては非常に興味深いところです。

1993年Robert Wayne
ミトコンドリアDNAの塩基配列を解析し、イヌとタイリクオオカミが近縁種で
ジャッカル、コヨーテとは少し離れた存在だということを調べました。
どうも、犬はタイリクオオカミから進化したというのは共通認識のようです。
タイリクオオカミはアフリカにはいないのでユーラシア大陸のどこか、
ということになりますね。(いや、広すぎるだろ)

1997年Carles Vila
ヨーロッパ、アジア、北アメリカなど27地域162頭のオオカミと、
67種140頭の犬のミトコンドリアDNAの塩基配列を調べた。
犬は基本的な4つのオオカミグループから派生した、とあります。
(この辺り、英語がわからず微妙です。誰か教えて)
犬とオオカミが近い存在である、ということと、
4つのグループから発生したという多元発生説の可能性を述べています。多分。

2002年Savolainen
38頭のオオカミと654頭の犬のミトコンドリアDNAの多様性から
犬の起源は東アジアにある可能性が高いと考え、
犬は少なくとも1万5千年以上前に東アジアで家畜化された説
が唱えられた。多元説も含め、1万5千年「以上」前というところは共通認識。

2004年Heidi Parker
マイクロサテライトDNA解析を行うと、
中国犬(チャウチャウ、シャーペイ)、日本犬(柴、秋田)、バセンジー、
ハスキー、マラミュートがオオカミと近縁でそれ以外は後からできた種だと。
これは東アジア説を支持する結果になった。

2010年Bridgett vonHoldt カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)
核マーカーを用いた研究で
犬の祖先と家畜化は中東起源であるという説を発表。
ちなみにRobert WayneもUCLAの人

2011年再びSavolainen
以前発表した説のサンプルに偏りがあるという反論もあったので、
さらに多くのサンプルを増やして1712頭のミトコンドリアDNA
を解析し、オオカミを家畜化してイヌとなったのは
1万6300年前の中国長江南岸地域あたりである可能性が高い、と自説を補強。

2013年Olaf Thalmann
古代イヌ科動物の18種のミトコンドリアDNAサンプルを比較
古代ヨーロッパオオカミ(今は絶滅)がイヌの祖先である、という説。
現代オオカミより古代オオカミの方がイヌに近かったとのこと。
イヌ家畜化はヨーロッパ?

2015年Adam Boyko
2011年のSavolainenの発表に反論した人。笑
純血種4676匹と、雑種549匹の核DNAを調査。

ヒトに文句を言うだけあって、サンプル数も多いし、
ミトコンドリアDNAだと母犬系しかわからないのが核 DNAだと両親を追えるので
データとしては一番信用に足るものではある。

最新が一番いいわけではないけれども、、
複数の家畜化の証拠を探したけれども、全く見つからなかった=単一起源
家畜化は中央アジアである可能性が高いということ。がわかった。

どこで

中東、東アジア、中央アジア、ヨーロッパ、多箇所といくつか説が分かれている。

ピンクが中央アジア、黄色が東アジア ウィキペディアより画像引用

現生人類が家畜化した、とするならば、我らが祖先のホモ=サピエンスが
アフリカ大陸からユーラシア大陸に行ったのが7万〜5万年前になります。
それ以前に(ユーラシア大陸で)家畜化が行われたとするならば、
20万年前にヨーロッパから中央アジアにいた、ネアンデルタール人になります。

上記Savolainenの東アジア説をとるならば、人類が東アジアに到達した、
7万年前以降でないとつじつまが合わなくなります。
(例えば、13万5千年前には、東アジアにはまだ人類がいない)

いつ

先述のWayneやVilaはDNAの塩基配列の変異に要する期間を逆算して
13万5千年前 という説を出しています。
ただしこれは変異期間を逆算しただけです。
偶然を含む突然変異を考えれば、その期間は急に縮まり
その期間は約4万年くらい短縮できるそうです。
複数の突然変異を考えれば、1万5千年前くらいまでは縮まるのでは?
と言われています。


超ざっくりいい加減なまとめ

遺伝的調査、証拠、結論を追うことは必要だけれども

これまでの論文を読んできて、だいたいこんなもんなんじゃないの?ってところは

場所:中央アジア〜中東
人類がアフリカから広がっているのは疑いもなく、
他の説の東アジアやヨーロッパまで人類が到達するまでに
かなりの時間を要することになる。

いつ:1万5千年〜4、5万年前のどこか。
最長で13万5千年前になるが、家畜化された場所、接点を考えると
このくらいの時期が妥当なのではなかろうか。



犬猫

Posted by kyotako

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