牧羊犬と黒いスピッツ
世界のひつじ飼いの右腕たち
お待たせ?しました!
前回、ヤギ、ひつじをふかぼりしてからの、牧羊犬ふかぼりです。
JKCグループでいうと1G牧羊犬・牧畜犬に入る犬たちですが、
一言で牧羊犬と言っても世界の白い大きな犬で出てきた
「羊を護る犬たち」と「羊を追ってまとめる犬たち」がいます。
守るほうをガーディングGuardingドッグ、
追ってまとめるほうをハーディングHerdingドッグ、
と言います。(参考:Herding cats)
かっこいいからそっちで言うようにしましょう。
また、「シェパードShepherd」「シープドッグSheepdog」も
牧羊犬という意味の言葉になります。
ガーディングドッグについてはこれまでも
別の切り口で取り上げてきたので、
今回は羊を追ってまとめるほう、ハーディングドッグに
スポットを当ててふかぼりしていきたいなと思っています。
ただ、もう、御承知頂いているかとは思いますが、
牧羊は中央アジアからヨーロッパにかけて広く行われており
その土地その土地のハーディングドッグがいます。
全部を逐一取り上げることは不可能なので
また私の独断と偏見でチョイスします。悪しからず。
牧羊の歴史
歴史のおさらい
ヤギ、ひつじをふかぼりでも紹介したように、
「牧羊」の始まりはメソポタミア(イラン・イラク国境)で、
その後、西へ西へと牧羊の文化が広がって行ったものと考えられます。
そのトルキスタン遺跡情報詳細が掴めていません。
トルキスタン:テュルク人の土地。
西はカスピ海、東は中国西端までを指す広大なエリア!
マスチフや牧羊など様々な文化を伝えた大事な民族に違いありません。
この地図内にぜひ追加させていただきたいです!誰か探して!
現在のイランではお世辞にも犬に優しいとは言えないようです。
テヘランで犬の散歩が禁止に(BBCニュース2019年1月30日)
宗教的に犬は不浄のものと扱われていた部分もあるようです。
これに反発して、逆に犬を積極的に飼おうという動きもあるらしく
何かと犬の飼育でもめているところのようです。
イランの牧羊犬
犬種等詳細不明
こちらのページより引用させていただきました。
イランで大自然の絨毯に出会った旅の話 第5章(さしこうスタッフブログ)
当然のことながら犬種という概念はだいぶ後にできたもので
当時は、いや、今の時代であっても、
仕事ができれば外見や血統、犬種名などあまり本質的ではない。
この、リアルに仕事をしている犬たちのかっこよさと言ったら!
シビれますよね!
マスチフの血はそこまで強く出てないようです。
サイトハウンドの方が近いかもしれません。
ハンタウェイに似ていると思いました。
トルコの牧羊犬
アナトリアン・シェパード・ドッグ
トルコの牧羊犬の大元ともなった犬で、
6000年前よりいると言われている。
ここから西部のアクバシュ、
中部のカンガルドッグ(カラバシュ)、
東部のカルス・ドッグ
に派生していったと言われています。
ただこれらの犬たちは全てマスチフ、護畜犬種。
とてもハーディングタイプではありません。
今回追い求めている方向ではない。
wilipediaの牧羊犬の項目で
最初にヒットした東欧の牧羊犬がこちら。
クロアチアの牧羊犬
クロアチアンシープドッグ
ふむ。これは今回求めているハーディングドッグに近いですね。
ハンガリー原産のムーディの祖先でもあると書かれています。
さらにその起源は
アジアからのトレセトニ(Tresetni)とソイェニツキ(Sojinicki)、
セルビアのプーリンという犬を掛け合わせたとある。
いずれにしても、この地域で東アジアから来たとなると
モンゴル系遊牧民のマジャール人が頭に浮かぶ。
セルビアの牧羊犬
プーリン
クロアチアンシープドッグの祖となる、
プーリンの文献を発見しました。(苦労しました)
Pulin
ほっほー!そうくるか!と思いました。
後述するハンガリーのムーディもそうですが、
このタイプなんです!
「真っ黒」「たち耳」「カールした毛」
スピッツ系の感じも少し見られますよね!
ハンガリーの牧羊犬
ムーディ
クロアチアンシープドッグ、プーリンともそっくりですね。
ハンガリーの犬といえば、もしゃもしゃ犬で紹介した
コモンドールやプーリーが有名ですが、彼らはどちらかというと
ガーディングがメインで、ハーディングはこのムーディーが務めました。
ベルギーの牧羊犬
スキッパーキ
「真っ黒」で「立ち耳」、スピッツ系といえば
ベルギーの犬、スキッパーキではないでしょうか。
なんの予備知識もなければ、これはスピッツ系(5G)
に入ると思うんですが、
JKCグループではちゃんと?牧羊犬(1G)になっているんです!
ほっほー!ってなるじゃないですか。
もう一種、ベルギーの牧羊犬代表をご紹介。
ベルジャンシェパード(グローネンダール)
黒くて立ち耳で牧羊犬でベルギーで、と来たら
絶対この犬は外せませんよね。グローネンダール。
ご存知の方も多いと思いますがベルジャンシェパードは
タービュレン、マリノア、ラケノアと合わせて4種存在しますが、
今回は敢えてこの真っ黒なグローネンダールを。
なんとなく、流れが見えてくる気がしますよね!
ドイツの牧羊犬
ジャーマンシェパード
もうシェパードと言ったら世界的にもこの犬ですよね。
東から西へ犬が伝わっていったことを考えれば、
ベルジャンシェパードもこのジャーマンから派生したということは
容易に想像がつきます。
ジャーマン・ウルフスピッツ
写真を探しましたが、残念ながら見つかりませんでした。
ジャーマンウルフスピッツで調べると、
ほぼほぼ、キースホンドがヒットしてしまいます。
このwikipediaによると、体重30キロ前後、
「ウルフグレーの毛色を持つ巨大なポメラニアン」であるらしい。
しかも、牧羊犬として使役していた、とあります。やはりか!
まとめ
ハーディングドッグの流れ
牧羊が始まったとされるメソポタミアやトルコ周辺では
マスチフばかりが目立ち、ハーディングドッグの起源は見られない。
(あくまでも私が調べた限り、での話!)
東欧においてようやくハーディングドッグの祖となる犬たちが
見られるようになったが、
そこには「立ち耳」「真っ黒」の
スピッツを感じさせる犬たちの姿がありました。
意外ですよね!私も調べていて「ほっほー!」って思いました。
ハーディングドッグの活発さやスタミナは
ハスキーやサモエドをはじめとしたスピッツ系の血が
入っているからではないでしょうか。
東欧に行くにつれて、北方から「スピッツ」の血が入ってきて、
さらには次のふかぼり課題である「サイトハウンド」
が合わさって、西へ西へとその血が流れていくんです!
ハーディングドッグ=スピッツ+サイトハウンド
こんな数式が見えてきませんか?いやーゾクゾクしますね!
ハーディングドッグはその後、産業革命を迎える前のイギリスで大活躍を遂げ、
その後の時代に牧羊大国オーストラリア、ニュージーランドでも発展を遂げていきます。
うーん。壮大。犬の歴史と人の歴史。面白すぎますね。
追記
サウス・ロシアン・シェパード・ドッグの項で
18世紀末、旧ソ連の一部であったウクライナでは
羊の放牧が盛んで、季節ごとに飼育地を移動させていた。
この移動作業のためにスペインから牧羊犬
(犬種は不明、若しくは非公開)が連れてこられ、使役されていた。
との文章を発見!
なんと、非公開、、いろんな政治的理由もあったのかもしれませんが
そういうことで情報が全く得られないということもあるんだ!
と思いました。