イベルメクチンを深掘り

犬猫, 生きもの

犬を飼っている人の中では「常識」

必ずやる3つのこと

犬を飼うと、健康であっても必ず1年に3回は
病院にかからなければならないことがあります。

1.狂犬病ワクチン接種(登録も)
2.混合ワクチン接種
3.フィラリア(とノミダニ)の予防

1の狂犬病は
狂犬病予防法によって法律で定められています。
日本で感染することはまずあり得ませんが、今回のコロナのように
諸外国から万が一持ち込まれる時のために接種が義務付けられています。
接種と合わせて市町村への「登録」が必要になります。
ワクチン3千円+登録鑑札料500円程度

2の混合ワクチンは
パルボウィルスやパラインフルエンザなど
複数のウィルス感染症を予防する混合のワクチンのこと。
狂犬病とは別で接種します。
法的拘束力はありませんが、人間のインフルエンザのように
現在もなお流行がある感染症のため、ホテルやトリミング、
ドッグランなどでは1年以内の接種証明提示を求められるところが多いです。

ワクチンは弱った、あるいは毒性のなくなった病原体を
注射することで体に抗体を作らせるのが目的であるため、
大型犬であろうと小型犬であろうと、量(料金)は変わりません
(獣医さんによっては手数料を変えて取られるかもしれませんが)

混合する種類にもよりますが、6種8千円とか8種1万円程度。

フィラリアの季節

駆虫薬

最後の3つ目が今回の主役、フィラリアの予防です。
毎月おやつのような形をした駆虫薬を飲ませるのが一般的ですが、
注射で済ませたり、数ヶ月に一回の投薬で済むものも出ています。
また、フィラリアだけでなく、ノミ・ダニを合わせて予防する
混合薬も主流になってきています。

昔は、フィラリアは薬で飲ませて、ノミダニ予防薬は首筋に垂らして
ってやってたんですけどねー。

料金が高くつく

フィラリアに感染していて体にたくさんいた状態で駆虫薬を飲むと、
体内のフィラリアが一気に死滅して血管や心臓に詰まったりすると
犬も死んでしまいます。

その年の初めの駆虫プログラムを始める前に
フィラリアがいないかどうかチェックする血液検査をするのが一般的です。
これも値段が高くなる理由の一つ。

フィラリア駆虫薬は体重によって飲む量が変わる抗生物質であるため、
大型犬や体重の重い子は高くつきます

5月くらいから飲ませ始めて、蚊がいる12月まで続けます。
成犬になると体重変化がない前提で半年分くらいまとめて薬をまとめ買いします。
これも値段が高くついちゃう一つですよね。

フィラリアを予防できたおかげで寿命が延びた

よく、人のご飯を犬にあげたら早死にするよ!とか
ドッグフード、キャットフードがよくなったから寿命が延びたとか言われますが、

その効果はごくごく一部。

実際最も犬の寿命伸長に貢献したのは、間違いなく、
フィラリアの予防に違いありません。

フィラリアは蚊が媒介する寄生虫で、吸血の際に
犬の体内にミクロフィラリアという卵を送り込み
体内で白いミミズのような成虫になって最終犬猫を
殺してしまう恐ろしい寄生虫です。

ちなみに最もヒトを殺している動物も蚊だそうです。
(マラリアなどを媒介するので)

今でこそ、毎年夏になるとフィラリアの薬を飲ませることは
犬を飼う人の中では常識になっていますが、
このフィラリアを予防する薬、
イベルメクチン製剤が発売されたのはなんと1987年のことです。

以外に最近のことだと思いませんか?

1987年以前の犬の平均寿命は約6.5歳だったのが
この年を境に急激に平均寿命が延びているのです。

(参考・引用)家 庭 動 物 (犬 猫) の 高 齢 化 対 策

1988年からくん!と伸びてますよね!

今はその約倍くらい、12年〜15年と言われていますね。
もちろん他にも長寿になった理由はあるかと思いますが。

そしてそして、
この偉大なる発見をした人物が日本人であるということも
以外と知られていない事実かもしれません。

今回はこのイベルメクチンに注目していきたいと思います。

 

微生物の可能性

青カビからペニシリン

抗生物質として有名なペニシリンは培養していたブドウ球菌に
間違ってカビの胞子が落ちてしまって、そこの部分だけブドウ球菌が
溶解していることに気づいたところから発見されたと言われています。

結核を治す!ストレプトマイシン

昔は不治の病として知られていた結核。
原因は結核菌ですが、これには伝家の宝刀、ペニシリンも無効でした。
この結核菌を殺菌するのがストレプトマイシンです。
この抗生物質はなんと土壌に棲む、
ストレプとマイセス属の放線菌から分離されたものなのです!

目には目を、歯には歯を。

菌をもって菌を制す。

つまり、空気や土、水、いろんなところに微生物がいて、
そこには抗生物質となり得るようなあらゆる可能性があるということ。

日本の土壌から発見!イベルメクチン

今回の主役、イベルメクチンも、これまでの研究結果から
いろんなところから「菌」を集めて研究したのだと思われます。

当時の北里研究所抗生物質室長は動物の新しい薬の開発を目指して
アメリカの大手製薬会社MSDと共同研究をしていました。

1974年に静岡県川奈のゴルフ場付近の土壌から発見された、新種の放線菌
これが生成する物質を元に薬が作られました。

これこそがイベルメクチンです。

いやーその辺の土にいる菌が新種で、
そこからノーベル賞を受賞するようなすごい薬が作られるって
なんか、すごくないですか?

放線菌、すげー!

放線菌
Y tambe – Y tambe’s file, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=673764による

イベルメクチンは魔法の弾丸

フィラリアをやっつける抗生物質、イベルメクチン。

人間に悪い影響を及ぼすものに、ウィルス、菌、寄生虫がいますが、
ウィルスは「生物と無生物の間」
菌は「単細胞生物」
人とは違う形を取っているので、比較的やっつけやすいのに対し、
寄生虫は我々と同じ多細胞生物
寄生虫だけやっつけて、ヒト、犬には無害
ってこれとても難しいことなんですよね。

 

「人間に無毒な殺虫剤」と聞くと、
いかに難しいかがわかるかもしれない。
人間や犬などにはきかないで、寄生虫だけに確実に効くようにする。
イベルメクチンは「魔法の弾丸」とも言われている所以です。

線虫の神経にして死滅させるのですが、
メカニズムは専門的で難しいので割愛します。
他の抗生物質でもなぜ効果があるのか正確にわかってないのもあるようです。

ただ、後述するように、イベルメクチンは多くのヒトにも使われている

副作用の少ない超安全な薬であるということも知っておくといいと思います。

だからノーベル賞にもなったんでしょうね!

コリー、ボーダーコリーには使えない

どんな薬にも副作用はあるものです。
イベルメクチンは線虫の神経に作用して効果を発揮するものですが、
犬やヒトの「血液脳関門」を通過することは通常できません。
だから本体の神経に作用することはないんですね。

ところが、コリーやボーダーコリーなどの一部の犬種を含め
この「関門」はちょっと緩かったり不完全だったりする子がいます。

そういう子にはイベルメクチンは使えないのです。

 

大村智教授

イベルメクチンは犬猫のフィラリアを予防するだけではなく、
ハエが媒介し、アフリカや中南米で流行したヒトを失明させる寄生虫症
オンコセルカ症をも予防する薬として使えることがわかりました。

それが評価されてついに、
2015年にノーベル生理学賞・医学賞を受賞した大村智博士こそが
このイベルメクチンの発見者なのです!

大村教授
Bengt Nyman – 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=45489848による

新型コロナウィルスにイベルメクチン

効果に期待

最近ニュースでイベルメクチンを耳にしたと思ったら
コロナに有効かもしれないというニュースでした。

なんども書いてきましたが、イベルメクチンは線虫、寄生虫を殺す駆虫薬で
コロナウィルスはその名の通りウィルスです。

全く違うものなのに、なんで効果があるのかな?

と思って調べました。

吉川泰弘のホームページ

イベルメクチンのコロナウイルス阻害作用は、細胞質のタンパク質を核内へ運ぶ分子であるインポーチンと結合して、シグナルの核内移行を抑制することです。その結果、コロナウイルスは、シグナル伝達系のSTAT1などを介したインターフェロン誘導等の自然免疫系の活性化を阻害する(「コロナウイルス感染症」に書いたようにアクセサリー遺伝子の多くはこの機能を持っています)のですが、これを妨害します。その結果、宿主の自然免疫系が活動しコロナウイルスの増殖を抑制すると考えているようです。

えぇ。何言ってるか全然わかりません。
まだまだ、勉強が足りません。汗

犬猫, 生きもの

Posted by kyotako

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