温故知新
子猫物語(1986年)
畑正憲監督・脚本
畑正憲映画監督・脚本といえば子猫物語です。
1986年、今からもう34年前!
知らない子がいてもおかしくはないですね。
海外でも「Adventures of Milo & Otis(英題)」として
世界中で見られた映画作品です。
その、映画が作られる直前に書かれた本がこちら。
仲間に起こった不幸な事故、命と向き合うという厳しさ。
ムツゴロウシリーズでは文春文庫が有名で、どちらかといえば
マイナーに思われるかもしれない本書を
ムツさん著書のナンバーワンと推すファンも少なくない。
ぜひこの機会に読み直していただきたい一冊。
ムツさんとパグの出会い
あの、ムツゴロウさんだって、初めての経験はあること。
無人島でクマや雑種の犬たちとの共同生活は経験していても、
都会の屋内(東京事務所)でパグと生活したことはなかったんですね。
動物王国ノクターン (角川文庫)
当時はまだ珍しかったパグを東京の事務所で
預かることになってしまったムツさん。
ひょんなことから始まった1人と1頭の共同生活。
初対面にも関わらず、すんなりと他人の生活と懐に
溶け込んでいくパグの特殊能力にムツさんが徐々にハマっていく。
執筆中はふてくされた顔で机の下でじっと寝て待ち、
ふっと息をつくといつの間にか起きて隣に座っている。
外を歩けばみんなの注目を浴びる人気者、
ちょっと早足になるだけでムツさん以上に息が上がってヘロヘロに。
「なんだこの犬は!」
大好きだった麻雀も、事務所に残してきたパグが心配で
途中で切り上げてそそくさと帰るムツさん。かわいい。笑
中世、中国からヨーロッパ(オランダ)に渡った際も
王族貴族がその虜になったのもこんな感じだったのでしょうね。
パグは「もっとも空気を読む犬種」だと思っています。
人の喜怒哀楽を敏感に感じ取り、共感してくれる最高の相棒。
ムツさんはそれを鼻(マズル)を失った代償として得た特性と表現していました。
預かったパグはこの後、飼い主にまた引き取られていくのですが、
そんなエピソードがあって、のちにムツさんはパグを迎えることになります。
子猫物語のプースケの構想はここから生まれてきたのですね。
他に、未熟な獣医の誤診で命を落とした道産子「チビ」の話や
それに伴う、アンチとの戦い、怒りも綴られている。
命と真剣に向き合うからこそ怒りも生まれてくるもの。
激しく生きるムツさんも感じられる大好きな一冊。