動物感覚 後編

犬猫, 生きもの

動物の知覚

犬の視力は犬種差がある

これは「サイトハウンド」という言葉があるだけに当然のこと。
ウィペットやグレイハウンドをはじめとしたサイトハウンドは目が良い犬種。

ただ、次の記述は新鮮でした。

ジャーマンシェパードの53%とロットワイラーの64%が近視で、
盲導犬の厳しい訓練を受けているジャーマンシェパードの
近視率はたった15%だったということ。
調教師には原因のわからないまま、
調教プログラムからふるいにかけられていたのだろう。

ヒトはこうして特性を選別することで犬種を洗練し、
特性を築き上げてきたのだと改めて思った。

この本では後の章で、純血種を作り出す
「単一形質繁殖の弊害」についても述べられている。

象のコミュニケーション

象は耳がいいのは素人感覚でもよくわかる。

実はヒトに聞こえない低周波長域の声を出して
コミュニケーションをとっていることがわかっているそうです。

参考サイト 象と低周波

でも、それだけに止まりません。
地面の振動を足の裏で感知すること
コミュニケーションをとっているのではないかという仮説も!

うさぎも足を踏みならして感情をあらわにすることがありますよね。

象の足の裏は小石を踏んでも気づくくらい繊細な感覚器官です。
その巨体を支える大切な足を、万が一にも怪我をすると
歩行困難、ひいては命にも関わること。

足裏にパチニ小体マイスナー小体が見つかれば
その証明につながるとかかれてありました。
え?今どうなっているんでしょうね。その研究。気になります。

家畜の繁殖

形優先、情動無視

第3章では家畜の繁殖、性質の特性について書かれています。
一つ一つに対して、私も意見があるため、
読むのがヒジョーーーーに遅くなる。

その肉を効率的に得るため、餌は少なく、でも成長は早く、筋肉量が多くなるように
選択交配されていて、それによる情動的な変異に気を配られることはない

ということに対して注意喚起している。

雌鶏を殺してしまうような攻撃性の高い雄鶏が生まれたりしているそうです。

普通、生き物でそんなことが起こっては絶滅してしまいます。

望んでそういう個体を作っているわけではないにせよ、家畜であるがために、
「人工授精ができれば、自然な交配などできなくても構わない」
という個体が増えていってるということです。

加工されて肉や卵になってしまえば、
その個体の性格や情動など全く関係ないですもんね。

なんか、恐ろしいですよね。

 

雑種と純血種

これは他の牛や豚などの家畜はもちろんのこと、犬にも同じことが言えて、
血統書団体のスタンダードに基づく「形質」を残そうとこだわるあまり、
性格や情動に難がある子も増えていると著者は書いている。

家畜である以上、何かしらの
「淘汰圧」がかかることは避けられない。

ある調査によれば、
アメリカで飼われている犬の40%が純血種であるのに
犬がヒトを襲って命に関わった事件のうち74%が純血種だったと。

そのあとに

ラブラドールの子犬は噛み癖が酷いが、
雑種の子犬はそんなことは一切しない

という内容があり、
「それはちょっと偏った考えでは?」と思いました。
確かにラブやゴールデンの子犬は元気でやんちゃが過ぎる子も多いけど、
雑種だって色々いるはずだ、


今はショーの世界でも性格の良さを評価に含めるようになってきている。
(この本は2006年の海外の話なので時代と場所にズレがある)

雑種だって形態、性格は様々なはずだ

ネオテニー

「犬はオオカミの幼体成熟(ネオテニー)である」と書かれている。
確かに、2006年当時、そういう意見が多かったと記憶している。
(ちょうど東京ムツゴロウ動物王国が開園していた時で
特に犬の起源についてはムツさんの話を聴きながら勉強していた時期だ)

幼体成熟(ネオテニー)とは、
動物において、性的に完全に成熟した個体でありながら
非生殖器官に未成熟な、つまり幼生や幼体の性質が残る現象のこと。

ウーパールーパーはメキシコサラマンダーの幼体成熟

これに対しては異論がある。
オオカミとの共通点も多くあるけれど、共通祖先から分化した違う種であって
オオカミを飼い慣らしてもイヌにはならないし、
仮にイヌを正常成熟させてもオオカミになることはない。

(くどいようですがこの本が出版された当時はそう考える人も多かったのは事実)

東京の動物王国で
センちゃん(センタロウ)が一番「プレイボーイ」だったなぁ。

多くの子を残したセンですが、
イヌ社会において年齢に連れて順位は上がっていくものの、
ボスになったことは一度もありませんでした。

オオカミの世界では原則、群れの中で最も地位の高い
アルファメスとアルファオスのみが子を残すようになっています。

 

小まとめ

とても科学的な話がある一方で、その結論は強引でしょ!?
と思う部分も多々あって、、いろんな意味で

面白い本

なのです。

家畜繁殖について思うこと

ブリーダーへのフィードバック

家畜といっても話のメインは犬になってしまいますが。
繁殖、形質、情動の遺伝で一つ思ったのは、

子犬がエンドユーザー(飼い主)に渡ってから、
どのような生活を送り、どんな性格で、
どんな性質を持つようになったか、というフィードバックを
日本にいる多くのブリーダーは持っていない。という事実。
(一部


極端な話、誰が飼っているか、
どこに住んでいるかすら知らないことがほとんどだ。

致命的な遺伝的疾患があった時だけ、
ブリーダーへの連絡があったり、
兄弟犬を飼う人に注意を促す連絡が行く場合もある。

逆にいうと遺伝的疾患以外は一切フィードバックが行われない。

これは本当に問題だと思う。

里帰り、兄妹オフのススメ

動物王国では父犬、母犬が王国にいて、子犬たちが全国に旅立っていきました。
毎年のように年賀状や成長報告、そして、永眠の報告まで。
どんな子で、どんな生活を送って、どう最期を迎えたか、まで。

生家に「里帰り」することもあるし、
親子兄妹が再会するオフ会も度々開かれる。

2019年のオフ会には89頭ものサモエドが一同に会した。

こういうオフ会を通して
生家(ブリーダー)、兄妹、親戚での情報交換が行われます。やったほうがいいですね。
ペットショップで犬猫を迎えると、こういう機会はほぼ得られません。
見直すべきところかと。

犬猫, 生きもの

Posted by kyotako

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