猫風邪の話

犬猫, 生きもの

コロナウィルス

世界を賑わすコロナウィルスは猫にもあって、
諸説ありますが世界中の猫の約半数が
コロナウィルスを持っていると言われています。
猫の場合、このコロナウィルスに感染しているだけであれば
ほぼ何も起きません。
ただ、うつります。
最近は多頭飼いをする人も増えましたが、
食器の共有や、お互いの毛づくろい(唾液)などを介して
簡単にうつっていきます。

そのまま悪さをしないのであればいいのですが、
このコロナウィルスがFIP(エフアイピー)と言う
致死率がほぼ100%の
超怖ろしいウィルスに「変異」することがあるんです。

1歳未満の若い猫と、老猫に多い。

ペットショップで言うと、ちょうど販売して
お客さんのところにいったくらい。
「なんか、病院に行ったら、FIPって言われたんですけど・・・」
不安そうな声で飼い主さんから連絡が来る。
それは余命数ヶ月の宣告を受けたに等しい。

まだ発症頻度がそれほど多くはないのが救い。
1.なぜコロナウィルスが変異するのかがわかっていない。
ストレス(多頭飼育)が原因かもとも言われているが不明。
2.抗体がウィルスの感染を促進させるのでワクチンが無効。

猫コロナウイルスで発症する猫伝染性腹膜炎とは
(ロイヤルカナンホームページより)

恐ろしいネコの病気 猫伝染性腹膜炎 FIP
(過去記事)

知らない=怖い

今の新型コロナウィルスに似てる

よく野良の子猫たちをみると、みんな鼻・顔周りが
グジュグジュになってしまっていることとかありませんか?

いわゆる、「猫風邪」と呼ばれるものです。
野生というかそのままにしておくと、
免疫力が弱い子なんかは肺炎を起こして亡くなります。
そういう「ふるい」に生き残った強い子がまた残っていきます。

ショップにいた時も、お店に来てから体調を崩す子がいました。
くしゃみが出て、食欲が落ちて、熱が出て。病院に連れて行くと
「あー猫風邪ですね、安静にしてあげてください」
免疫力をあげるインターキャットや脱水を防止する補液、
抗生剤などを処方してもらって、回復を待ちます。

風邪ですから、本当に、よくある、ことです。

名前がついてくる

ある時、従業員がすっ飛んできました。
従「大変です!カリシウィルスに感染した子がきました!」
販売前の子猫で検査をしたところ
カリシウィルスに感染していると診断されたようです。
従「どうしたらいいですか?事務所に隔離ですか?」
え?と思いました。今までそんなことしてなかったのに。
従「先住猫を飼われている方にはもう販売できないですよね」
え?そんなことないでしょ。
従「カリシウィルスってうつるって聞きました!
それでも売っちゃっていいんですか!?」
すごい剣幕です。
待て待て待て待て。落ち着きなさい。
まるでアウトブレイク、パンデミック、バイオハザードです。

今まで「猫風邪」って言われていた時と全然違うんです。

参考サイト
猫風邪(猫カリシウィルス感染症)とは
獣医さんに聞く!猫が風邪をひいたらどうすればいい?

多くのサイトにも書かれているように、
世間でいわゆる「猫風邪」と呼ばれている
ものの中の一部は、
カリシウィルスだったり、
ヘルペスウィルスの感染症だったわけです。
ちゃんと検査をして結果を出していないだけですね。

今まで、猫風邪と診断されてきた数多くの子たちが、
特別な隔離をしたり、販売するお客様に対して
単頭飼育義務などの制限をしたりしていたのであれば、
そうするべきでもあるのですが、
(基本、ショップにいる猫たちはバックヤードも含め
1頭1ゲージ管理で初めからある程度「隔離」状態になっています。)
今回のこの子に限って、たまたま、カリシウィルスに感染と
言われただけで、(悪い意味で)特別扱いになるのは変ですよね?

ということなんですけど、これが、なぜか、まぁー通じません。

私がむちゃくちゃ疑われます。
「こいつ何言ってんだ?」的な扱い。
怖いなぁ・・・

カリシウィルス

舌潰瘍

悪名高い犬猫のオークションに行くと、
セリに出される犬猫の「欠点」が列記されます。
その中の一つが猫の「舌潰瘍(ぜつかいよう)」
簡単にいうと舌に口内炎のようなできものがありますよ。
と言うことなんですが、
初めて聞いた時はなんのこっちゃ?と思いました。

実はこれがカリシウィルス感染歴を示すものなのです。

舌をみるとわかります

一本鎖RNAウイルスであるカリシウィルスによる感染症で
エンベロープ(殻)を持たないウィルスです。
と、ここまで聞くと、
パルボウィルスやノロウィルスと同じ感じかな、
と思うわけです。殻を持たないウィルスは
平常状態で長く生き続けられるので
感染力が強くアルコール効かない

2017年にイギリスの大学チームが研究したところ、
ヨーロッパ全体でのカリシウィルス感染率は
9.2%と書かれています。
ScienceDirect

一説によると屋内飼育猫で約10%。
保護施設とか多頭飼育環境では
30%〜40%の感染率だそうです。

猫以外のライオンやトラなどネコ科動物に発症するようですが
逆にネコ科以外の動物には感染はしても発症はないようで。
ヒトが中心となってネコに広げている
可能性も十分にありますね。
猫にとっては非常に迷惑ですね。

インフルエンザ同様、子猫や老猫など体力・免疫力のない
個体は合併症などで命を落とす「ことも」あります。

ただ、症状がおさまってからも
30日以上ウィルスを排出し続ける。
(人間のインフルエンザだと約1週間)

発症している間はもちろん、症状がおさまってしばらくは
他の猫との接触もできれば避けたほうが良いですが、
「一度発症してしまったから、多頭飼いしている人には売れません」
というのはちょっと極端だな、と思うのが伝わったでしょうか。

家族にインフルエンザが出た、そんな感じで思ってください。

お家に老猫や子猫がいるところは注意が必要ですね。
実際にカリシウィルスを発症した
猫多頭飼いの方の記事がありました。
猫風邪(カリシウイルス)は怖い病気?多頭飼いの方は要注意!

ネコのワクチン

一般的には3種

どのウィルスでもそうですが、
そのウィルス単体に感染して発症するだけでなく、
複数のウィルスに感染したり、
体が弱って菌が増殖して肺炎を起こすなどの
「合併症」によって命を落とすことが多いと思います。

カリシウィルスとこの後に出てくるヘルペスウィルスに関しては
ネコの3種のワクチンに入っています。

  • 猫カリシウイルス感染症
  • 猫ウィルス性鼻気管支炎(ヘルペス)
  • 猫汎白血球減少症
ただ、ヒトのインフルエンザ同様、いろんな株があるので
必ず予防できるわけではありません。

でも、ワクチン接種することで軽症で済むことが多いです。

猫汎白血球減少症(猫パルボ)

パルボなの?ジステンパーなの?

私の中でもっとも謎なのがこのウィルス。
猫のパルボウィルスが原因になって引き起こされ、
実際、犬用のパルボチェック(業界ではPチェックという)
でも陰陽が判別できるということです。が。

犬のパルボウィルス感染はしばしば流行が見られますが、
猫はほとんど聞きません。なぜかわかりません。
(誰か教えてください)
稀に、猫がひどい下痢などを起こして亡くなった時に、
結果として「猫パルボだったのかもねー」と言われるくらい。
そこから犬のように感染が爆発的に広がることもなく、
それっきりです。

つまり、これが猫パルボです!
という子をそこまで見てないので
正直なところよくわかりません

ただ、それだけ
症例が少ない=感染リスクが少ない
のだと思っています。
犬のジステンパーもそうですが、
長年ペット業界にいて
これまで1度も見たことがありません。
何度か
「ジステンパーの疑いがあります」
と診断されて大騒ぎになり、で、結果、
やっぱり違いましたね、、、と言うのは何度かありました。
なんだよ!驚かせるなよ!ってその度に思いました。

そして猫パルボウィルスが原因で起こるものなのに、
「猫ジステンパー」とか「猫伝染性腸炎」とも言われるのです。
犬ではジステンパーとパルボは全く違います。

なぜ猫はそんな混乱するような呼び名になっているのか。

ヘルペスウィルス

結膜炎・角膜炎

目に悪さをするものとしてこのヘルペスウィルスがあります。
最初は目がグジュグジュになって目やにが
多くなったりする程度なのが、痒みも出てきて
自分でこすったり引っ掻いたりすると
症状が悪化、失明することもあります。


まれに片目を失った子をみると
あれ、ヘルペスになっちゃったのかな・・・
と思います。

風邪もこじらせると怖いですよね。

隔離される子達

猫エイズキャリア

隔離した方がいい場合も当然ある。
以前、大阪に行った際に保護猫カフェに行きました。
ネコリパブリック

その際、別室で隔離されている猫達がいました。
「あちらの部屋の猫達は?」と聞くと
りんご猫たちです。と。
りんご猫???という顔をしていたら、
猫エイズキャリアの子達と教えてくれました。
エイズという言葉が無用な差別を
生み出す要因にもなっているということで
呼び方を変えているのだそうです。

猫エイズはキャリアのまま発症せずに長生きする子も多い。

たかが名前、呼び方が違うだけと思うなかれ。
「猫風邪」と「カリシウィルス感染」と同じことです。

猫エイズは隔離されてしまっても、「猫風邪」疾患履歴で
生活を隔離することはありません。
生涯において隔離をするのは唯一、猫エイズキャリアだけですね。
ちゃんと消毒をして部屋を分ければある程度の共存も可能です。

里親保護猫業界の一部でも、
そういう差別的風潮があるようで。
「カリシウィルス、ヘルペスウィルスに感染したから
猫を飼ってる人には譲渡できない・・・?」と言う誤認ですね。
その誤認はその子の未来への道幅をぐっと狭めてしまいます。

業界のプロでもミスをおかしがち。
正しい知識を得ていこう。

犬猫, 生きもの

Posted by kyotako

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